家づくりをする中で気になる点の1つとして耐震性があると思います。日本全国で地震が多発し、家族と一緒に住む家は安心安全でなければなりませんし、家が倒壊して家族を傷つけてしまったということは、万が一にもあってはいけません。
木造住宅では地震から家を守るポイントとして「筋交」や「合板(構造用面材)」があります。
筋交や合板は、地震で家が横揺れした際に遠心力で建物が倒壊することを防ぐ役割を持っています。筋交や合板が取り付けられていない古い住宅では、地震に対してとても弱く、家が倒壊してしまうリスクが高いことは一般的にも広まっています。
ただ近年は筋交と合板はどちらがいいのか?という疑問が多数あり、筋交と合板のメリットやデメリットをここでは整理していきたいと思います。
筋交と合板のメリット・デメリット
筋交
筋交は柱と柱の間に斜め、もしくは罰点になるように木材を取り付けることで、家が横揺れに対して歪んだり、倒壊したりしないようにするための部材です。筋交は地震時に抜けたり、ずれたりしないように筋交専用の金物で柱に取り付けられます。
筋交は一般的にスギやヒノキ材が、太さは9cm×3cmや9cm×4.5cmが使用されることが多いように感じます。
大きな地震の被害に遭うと、筋交は耐えられず折れてしまい、筋交が折れた段階で耐震性はゼロになります。筋交を取り付けた家は地震の揺れを家全体が吸収しながら揺れる傾向があるところも特徴的です。
筋交は柱と柱の間(壁の中)に取り付けるため、壁の中に断熱材を取り付ける場合は、断熱材の取り付けスペースの減少や偏りが発生し、家の断熱性能が低くなりやすい傾向があります。ただ、外張り断熱などで対応することも十分に可能です。
合板
合板は柱の外壁側に釘で打ち付けて家全体を面で固めることで、地震から家を守ります。合板は厚さ0.9cmや1.2cmなどの構造用合板が用いられるほか、ダイライトなど専用の面材を使用することもあります。合板は法律で定められた釘を、法律で定められた間隔で取り付けていきます。
大きな地震で何度も揺れに遭うと、釘が徐々に緩み耐震性が低下していきます。また、構造用合板を使用する場合は、構造用合板は雨(水分)に弱く、建物の老朽化で屋根や外壁から雨水が浸入し濡れてしまうと脆く朽ちやすい性質があり、朽ちた構造用合板の耐震性はほぼゼロとなります。
合板などで家をぐるりと覆われた家は硬く、筋交のように建物が揺れを吸収できないため、地震時の揺れをダイレクトに室内に伝えてしまうデメリットがあり、想像以上に揺れを感じやすくなります。
筋交と違い合板は柱の外側に取り付けるため、壁の中のスペースが空いており、柱と柱の間に断熱材を施工しやすく(充填断熱)、家全体を断熱しやすいメリットがあります。
筋交と合板のどちらの性能が高い!ということはない
筋交が取り付けられた家も合板が取り付けられた家であっても、どちらが耐震性能が高いという違いはありません。どちらが正解ということはなく、筋交も合板もどちらも家を守ってくれます。
一番大切なことは、バランス良く耐力壁が配置されていることが大切であり、工事の不備や不良がなく、つくられていることが大切です。
ただし、最近の流行は合板です。工事が行いやすく工事のスピードも早いため、家をつくる工務店やハウスメーカーなどの多くが採用しています。
床板も地震から家を守る
地震から家を守るというと壁の構造が注目されがちですが、床の構造も同じぐらい重要です。壁と床が一緒になって地震の力に対抗します。
イメージとしてサイコロを思い出してください。正方形の6面がつながり合って形をつくっています。この6面のうち1面でも切り取ってしまった場合は強度が著しく落ちます。1面がないだけで、四角形の形を維持することは容易ではないのです。
住宅に例えると、強度が強い壁と床が部屋をぐるりと囲っている状態が地震に強いことになります。
床面を構造用合板で耐震対策
木造住宅の場合、フローリングなどの下にあたる1階の床下や2階の床に構造用合板が使用されることが多くなりました。通常は構造用合板24mm、28mmといった厚さのものがよく使用されます。
理由はいくつもあり、1つ目は「構造用合板を土台や梁などに釘でしっかり打ち付けることで耐震性能が向上する」ためです。2つ目は「隙間無く構造用合板を張り付けることで機密性が向上して冷暖房に有利」ということです。3つ目は「一般的に流通量が多いため安く手に入り、大工さんが加工しやすい材料」ということもあります。
構造用合板を利用した耐震は比較的新しい工法です。構造用合板をしっかり釘で打ち付けることで建物の水平面をしっかりと固定します。地震の際には強固に揺れに耐えるということになります。
床面を火打ち梁で耐震対策
地震の揺れを抑える方法は構造用合板を張る方法だけではありません。梁が交差するところに合わせて火打ち梁という斜めの材料を取り付ける方法です。この火打ち梁を使用した工法は従来より長い間使われてきたものです。
火打ち梁は細い釘を何本も打って取り付ける構造用合板と違い、梁にボルトで材を取り付けます。
火打ち梁で構成され耐震対策が行われた住宅の場合は、地震時の揺れから建物を強固に固定するというよりは、多少しなりながらも地震の力を逃がしていくという考えになります。
建物の間取りが単純な真四角では無い場合や吹き抜けが多くある場合は構造用合板での耐震対策は一ヵ所に力がかかりすぎて耐震性能が弱くなってしまうことが考えられるため、火打ち梁を利用するケースも多いです。
何度も大きな地震には耐えられない
壁の中にある筋交や合板、床下にある合板や火打ち梁は何十年にわたりずっと家を守ってくれるわけではありません。
何度も地震を経験した筋交は、筋交自体が疲弊し大きな力に対する抵抗力が落ちていき、何度も地震を経験した合板は、釘穴が広がり、合板同士は少しずつズレはじめ、大きな地震に耐えられなくなっていきます。床面に採用される構造用合板や火打ち梁も同様です。
傷ついた家はメンテナンスをする大切さ
地震後は家自体に問題は無いと思っても建物の外周部や部屋の中を見渡し、以前と変わったところはないか確認することがとても大切です。「ちょっとおかしいな」と思ったら、家を建てたハウスメーカーや工務店、設計事務所などに連絡をしましょう。
専門家に見てもらい、問題があれば直す必要がありますし、問題が無ければ「大丈夫かな?」と思った疑問や不安は解消され、安心して暮らし続けることができます。