動線を最優先した家のデメリット

新しく住宅を建てる場合や現在住んでいる家をリフォームする場合において、キーワードとなることが多い言葉は家事がしやすい家です。家事がしやすい家とは、家の中の家事動線が無駄なく計画され、動きやすさはもちろん、最短距離で家事が行えることを優先した家となります。

よく言われるのは、キッチン、洗面脱衣室、浴室を一列に計画し、料理をつくりながら洗濯ができたり、浴室が洗えるなどがあります。

夫婦共働きの家庭にとって家にいる時間は限られていますし、家事にかける時間を最小限にしなければ家族団らんの時間が削られてしまいます。その中で「家事のしやすい家=いい家」と言われています。

家事動線のパイオニアはハウスメーカー

家事動線が世間に広まった最大の理由はハウスメーカーにあります。多くの家庭で家の財布を持つ人が男性から女性に移り変わっていく中で、ハウスメーカーの最大の顧客は女性が財布を握っていて、ある程度お金を持った若い家族となりました。

女性が家の中で重視するポイントは水回りです。家事をする男性も増えていますが、まだまだ中心は女性です。水回りの間取りを徹底的に考え抜き、形にしているのがハウスメーカーなのです。

ハウスメーカーは積極的に女性が見るテレビ番組や雑誌とタイアップをしたり、CMや広告を積極的にし、魅力的なキャッチコピーと共に女性の心をつかみ、女性にたくさん勉強をしていただき、男性が知らないような情報や知識を得て、家庭内での家づくりの優位性を高めてもらうようにしています。

ハウスメーカーは社会的にも知名度があり、ハウスメーカーの住宅の情報がネット上にあふれていることで住宅のメリットデメリットを知ることができる安心感や、近隣関係を意識する人にとって見栄を張れるなどの社会的地位を確保できることも大切なポイントとなっています。

動線を最優先した家のデメリット

住宅で動線を優先したプランにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

  • 玄関に来客用と家庭用のスペースを分ける
  • 玄関から直接客間である和室へ行ける
  • 客間の和室とリビングを繋げる
  • 玄関から直接キッチンへ行ける
  • キッチンはダイニングやリビングとつながるオープンキッチン
  • キッチンからゴミ出しがしやすいように勝手口を近くにつくる
  • キッチンやダイニング、リビングから近いところに収納スペースをつくる
  • キッチンから洗面や浴室がすぐに行ける
  • キッチンの横には家事室
  • 洗濯機置場から物干しができる屋外へすぐに行ける

簡単にピックアップしてみました。動線を最優先した家というのは、各空間を壁で隔てることなく行き来できる家ということになります。家の中でテキパキと家事をするには最高の計画ですが、リビングのソファでくつろいでいても、見渡すところに出入口があり、落ち着かない空間になっているとも言えます。

時短や使い勝手を最優先した動線計画の家は、ある人には最高の住宅であり、ある人にはしっくりこない住宅です。動線計画を最優先した家が、みんなが最高に思う住宅ではありません。

欲しい車が軽自動車、ミニバン、コンパクトカー、セダン、SUVなど多種多様に分かれるように、動線を最優先した住宅にも合う合わないがあります。

あえて完璧な動線を求めない家をつくることも・・・

家事の動線をあえて最優先しない家のつくり方もあります。リビングがダイニングやキッチン、和室や廊下、洗面脱衣室の中継地点となるようなプランではなく、ダイニングとしか繋がらないように計画し、壁で囲み、ソファに座った時にしか見えない窓をつくることで、ホッと一息できたり、気分を切り替えることができます。

昔の和室のように、特に使い方を決めない部屋をあえてつくることで家の中に余力を持たせます。急に親が来て泊まりたいときに使用したり、ちょっと寝転がってゴロゴロしたいときに使用したりするのもいいです。用途が明確ではなく、最適化させていないことで、何にでも使える部屋が生まれます。

使いにくい!空間が勿体ない!と思われる方は、動線を最優先した家がよいと思いますが、このぐらいユルい家もいいのかもと思われる方は、あえて完璧な動線にしない家もよいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です