木造住宅の建て前の後に取り付けられる耐力壁と金物の見るべきポイント

木造住宅は建て前が終わった後に、住宅が地震や風などで倒壊しないようにするための材や金物が数多く取り付けられます。これらをチェックしていきましょう。

耐力壁と金物

建て前の後に取り付けられる構造用合板や筋交などの耐力壁の取り付け方を確認します。

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耐力壁の役割とは?

木造住宅では地震や突風などの自然災害で家が倒壊しないように耐力壁を設けることを建築基準法にて義務づけられています。

耐力壁を取り付ける量は建物の床面積、見付面積(建物の外壁面の面積と近い意味)、1階建て、2階建てなどの階数により各建物によって違い、一般的には建物の床面積が大きければ大きいほど、建物の高さが高ければ高いほど、1階建てよりも2階建ての方が耐力壁の量が増えます。

耐力壁の量は各ハウスメーカーや工務店、設計事務所などが計算をして決めます。近年の傾向として、建築基準法ギリギリの量ではなく、基準の1.5倍や2倍など多めに取り付けることが多くなっています。

取り付け位置については、この耐力壁は建物の一部に集中して取り付けるよりも建物全体にバランスのよい位置で取り付ける方が効果があります。また、1階と2階が同じ位置に取り付けた方がよい場合も多いです。しかし、実際は間取りの問題や窓の問題でよい位置に取り付けられない場合が多く、ハウスメーカーや工務店、設計事務所などの力量が試されるポイントとなっています。

耐力壁の種類

木造住宅に取り付ける耐力壁には大きく分けて筋交いと構造用合板張りの2種類あります。

筋交

柱と梁で仕切られた四角いスペースに斜めに材を入れます。それにより建物が地震の時に横揺れをして引っ張られたり、つぶされたりすることに対抗します。この斜めに入れる材は木材の場合や鉄の棒の場合などバリエーションはさまざまです。

筋交の確認の仕方

上の写真は筋交が木材の場合です。
木材の場合は主に3cm×9cm角、4.5cm×9cm角の材料を使うことが一般的です。

筋交の確認するポイント

筋交が柱と梁で構成されている枠の中からはみ出さずに、キッチリ収まっているかです。しっかりと枠の中で筋交が収まっていれば、地震などの時に力が柱や梁、土台などにしっかりと流れます。ずれていると変なところに力がかかり、折れたり外れたりする可能性が高くなってしまいます。

筋交金物がしっかり取り付けられているかも大切です。筋交の先端付近には筋交金物が取り付けられています。これにより筋交いが外れることを防ぎます。必要なビスがキチンと最後まで留めてあるか、必要な数取り付けられているかチェックをします。

筋交金物は前後左右どこにでも取り付けられるようになっているため、すべての穴にビスが取り付けられる訳ではありません。詳しくは大工さんや営業の方にお聞きください。

筋交金物で取り付ける場合には問題もあり、ビスと木材に何本も打ち付けるため、筋交の木が裂けてしまわないかというところです。法律的には問題ありませんが、少しでも避けにくい樹種を選んで取り付けることをオススメします。

また、筋交がX状(たすき掛け)に入っている場合の真ん中の細い柱(間柱)はどうなっているのか?と質問されることがありますが、筋交は削ることが許されていませんので、間柱が削られています。間柱の削られた残りの部分はすごく細いですが、間柱は地震の力を受ける材料ではないため問題ありません。

構造用合板

筋交と同じく柱と梁で仕切られた四角いスペースの外側に構造用合板をビスで留めます。地震の時には構造用合板がねじれを防ぎ、ビスによって外れないように対抗します。

構造用合板の確認の仕方

最近の木造住宅は柱と梁や土台に囲まれたスペースに筋交を入れる代わりに、厚さ9mmや12mmの構造用合板を柱や梁などの外側に釘で打ち付けます。この釘が「釘の長さが規定値以上」、「釘と釘の間隔が規定値より狭いこと」が求められます。どちらか片方でも守られていなければ、強い地震に耐えられない恐れが出てきます。

MEMO
最近は筋交いよりも構造用合板を張る施工工法が増えてきましたが、理由は「材料費が安いこと」、「工事が単純なこと」などがあげられます。基本的には建て主さんのメリットではなく、工務店やハウスメーカーなどの作り手にとってメリットが大きいためです。
注意
構造用合板は水に弱いです!上記の方法がしっかりと守られていても安心はできません。雨に当たり続けたり、長期間湿気の高い状況が続くと構造用合板が水気を吸い、ボロボロに朽ちていきます。

構造用合板の上に貼る防水シートの施工方法が雑であったり、外壁の経年変化などにより隙間から水が染みこむなどした場合は非常に危険です。


構造金物は取り付け位置も重要

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素人でも一目瞭然の構造金物

木造住宅で使用される構造金物はたくさんの形・種類があり、使用する場所・使用用途などもバラバラです。1つひとつ理解をするのは専門的な知識が必要のため、お施主さん(クライアント)が理解するのは難しいです。

構造金物の詳しい確認は現場監督さんや設計者に任せたとしても、お施主さん(クライアント)が確認できることもあります。構造金物の良い・悪いを一見するだけでわかります。

それは、構造金物の取り付け位置です。金物が柱や梁、土台の中心にしっかりと取り付けられているかということです。

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構造金物が取り付けられ始めるのは、建て前が終わった直後あたりです。基礎と土台をつなぐアンカーボルト、基礎と柱をつなぐホールダウンなど、木材の中心に穴が開けられていて金物が通っているか確認しましょう。

完全な中心でない場合も問題ありませんが、できる限り中心が好ましいです。

ズレている場合は計算以下の力しか耐えられない?

構造金物が中心からズレて取り付けられている場合の問題点は日常的な生活時ではなく地震などで大きな力が金物にかかったときにあります。

構造金物はネジやボルトで取り付けられていますが、地震の時には揺れて構造金物に大きな力がかかります。木材の中心からズレて取り付けられている場合は、木材の薄い方に大きな力がかかり最悪の場合、木材がバキッと割れて裂けてしまうことがあります。

裂けてしまった段階で、支えられる力はほぼ無くなりますので建物の倒壊に一歩近づいてしまいます。 見て歩いている中で気になる金物があれば、大工さんや現場監督さんに聞いてみましょう。

中間検査では構造金物の位置までチェックされない

木造住宅の場合、建て前が終わり構造金物が取り付けられた段階で、国が設計図通りに立てられているかチェックをする中間検査を行います。(都道府県により義務ではない地域もあります。)

この時に行われるのは、構造金物が必要な場所に取り付けられているかということが中心になり、よほど酷いケースでない限り、構造金物の取り付け方まではチェックしないことが多いです。(あくまでも取り付け個数と位置のチェック)期待してはいけません。


地震で柱が抜けることを金物で防止

地震などで柱が抜けないように柱の上下には金物が取り付けられています。

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柱と梁をつなぐ金物の役割

建て前が終わるとすぐに”土台と柱”や”柱と梁”などがつながっているところに金物(かど金物)が取り付けられます。この金物の役割は地震などで建物が上下左右に激しく揺れた際に柱がスポッと抜けてしまうことを防ぐためのものです。

もし柱が1ヵ所でも抜けてしまった場合、抜けた場所は地震に耐えることができません。抜けた場所のまわりがその力の分まで耐えなくてはいけなくなります。今度はまわりが耐えられなくなればそのまわりが・・・と徐々に家全体に広がり、やがて家自体が崩壊してしまう可能性も否定できません。

非常に薄い金物ですが、重要な役割を担っています。

丁寧に金物が付けられているかチェック

建物は数多くの柱や梁などによって組み合わされてできています。現在建てられている木造住宅は数多くの金物で補強されています。(金物を使用しない工法もあります。)

この1つ1つの材料を金物で補強することもあり、まず1つ目にチェックするポイントとしては金物の取り付け忘れがないかチェックしましょう。

2つ目は金物が丁寧に取り付けられているかチェックしましょう。一般的な木造住宅では柱に背割れが入っています。金物を取り付ける際にネジが背割れの部分に入ってしまうことがたまにあります。
ネジが浮いた状態の場合、しっかりとした耐力が得られませんので、その場合は取り付け直すか、もう1つ追加で取り付けるかする必要があります。

通常のビジネスマンであれば、なぜこのような初歩的なミスをするのかと怒られる方もみえるかもしれません。

しかし、実際は真夏日の日中において1日中屋外で重い材料を運んだりしています。また、土台取り付け、建て前、屋根工事、金物取り付け、筋交いなど地震対策工事、防水工事と建物が風雨にさらされる期間を1日でも短くする必要があるため、休み無しで工事することが求められます。長期的な体力も必要とします。

その中で、頭が回らなくなり細かい作業は集中力が欠けてしまいがちになります。もし、注意するヵ所を見つけた場合は素早く現場監督や大工さんに怒らずお願いをしましょう。

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